診療内容

婦人科一般

おりものの異常

イラスト 月経周期に伴うおりものの増減、若い女性でおりものが多い等は病気ではなく生理的なものが多いと思います。しかし、いつもより異常に多かったり、色が異常であったり、臭いやかゆみを伴う場合は腟炎、性感染症、ときには子宮がん等のサインである可能性があります。

《膣炎》
頻度的に多いものは腟カンジダ症です。この場合は外陰部にかゆみを伴うのが一般的です。豆腐かす様、チーズかす様の汚いおりものが特徴です。この他トリコモナス腟炎、細菌性腟症、閉経期、閉経後の方では萎縮性腟炎があります。いずれも疾患によって治療薬は異なります。

《子宮頚管炎》
クラミジア子宮頚管炎、淋病。これらの性感染症もおりものが主たる症状です。最近増加しているように思われます。これらは放置すれば子宮内膜炎、子宮付属器炎、さらには骨盤腹膜炎へと拡がるおそれがあります。

不正出血

生理以外の子宮あるいは腟からの出血を不正性器出血といいます。多くの場合はホルモンのアンバランスによるもので機能性子宮出血といいます。2、3日で自然に消失するようなら放置でもよいかと思いますが、1週間たっても止まらない、あるいは繰りかえし起こる場合は診察、治療が必要と思います。不正出血は子宮頸がん、子宮体がんの主症状でもあります。これらを除外するためにも不正出血があれば受診をお勧めします。

生理痛(月経困難症)

イラスト 生理痛は多かれ少なかれ殆どの方にあるといわれており、軽いものであれば特に治療は必要ないと思います。程度に応じて市販の鎮痛剤で対応すればよいでしょう。痛みがひどく普段の生活に支障をきたすような疼痛が毎月続く場合は月経困難症といいます。子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など、原因となる器質的疾患が認められないものを機能性月経困難症といいます。このような場合の治療薬として①鎮痛剤、②黄体ホルモン療法、③月経困難症用の低用量ピル(保険適応薬)があります。

生理不順

生理の開始日から次の生理の開始の前日までの日数を生理周期といいます。25~35日、平均30日ぐらいの方が多いと思います。これが極端に短い場合を頻発月経、極端に長い場合を揮発月経といいます。生理周期は年齢によって変化します。10代では無排卵性月経も多く周期は不規則なことがよくあります。20~30代は一般的に規則的ですが40代になるとまた無排卵のため周期が短くなり、閉経前になると稀発月経となって閉経を迎える。このような経年的変化をたどるのが一般的のようです。多少の不順は問題にする必要はありませんが、生活に支障をきたすような頻発月経、あるいは妊娠を望んでおられる場合は診療が必要と思います。

過多月経・過少月経

生理時の出血量が異常に多い場合を過多月経、異常に少ない場合を過少月経といいます。過多月経の場合は多量の鮮血とともにレバーのような凝血が混じることがあります。以前に比べて経血量が異常に増えてきた場合は子宮筋腫、子宮腺筋症などが考えられます。逆に経血量が異常に少ない場合は無排卵性月経等が考えられます。産婦人科受診をおすすめします。

子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫

子宮筋腫

イラスト 20代後半から50代までの女性にみられる子宮の良性腫瘍です。大きさは1㎝未満のものから直径20㎝を超えるものまで大小さまざまです。1個のみの場合(単発性)と複数個できる場合(多発性)があります。超音波診断により診断は容易です。加齢とともに増大していきますが、増大のスピードは個人差があります。閉経後は縮小していきます。良性腫瘍であり無症状のものは経過観察のみでよいと思います。悪性化する場合もあることが報告されていますが極めて稀だと思います。症状は過多月経です。以前に比べて経血量が異常に多くなってきた、月経のたびに貧血症状を繰り返すなどの症状が出てくればまず考えるべき疾患です。根治療法は手術(子宮全摘術もしくは筋腫核のみを摘出する子宮筋腫核出術)ですが、閉経に近い年齢の場合はホルモン抑制剤により無月経を維持する閉経逃げ切り療法もあります。

《子宮腺筋症》

子宮筋腫のような塊(筋腫核)を持たず子宮筋層全体が厚く肥厚するものを子宮腺筋症といいます。症状、治療は子宮筋腫に準じます。

子宮内膜症

子宮内膜の組織が子宮の外側(漿膜面)に付着、増殖し、子宮周囲に強い癒着を生ずる慢性の病気です。卵巣内に出血を繰り返すことによりチョコレート嚢胞といわれる嚢胞を形成します。症状は月経困難症です。月経期間中の排便痛も特徴的な症状です。20代後半から40歳ぐらいまでが好発年齢です。不妊症の原因にもなりますが更年期以降は自然に軽快、治癒していくようです。軽症、中等症の場合は薬物療法の対象ですが、重症の場合は手術が必要となることもあります。

卵巣嚢腫

婦人科疾患として比較的多くみられる疾患ですがいくつかの種類があります。卵巣の中に袋状のものが出来て中が水様の液で満たされるもの(漿液性嚢腫)、粘液で満たされるもの(粘液性嚢腫)、脂肪、毛髪、軟骨などで満たされるもの(皮様嚢腫)などがあります。いずれも良性ですが徐々に増大し直径15cm以上になることもあります。10cm以上になれば下腹部の違和感、鈍痛等の症状が現れることが多いと思います。いずれも超音波診断により診断は容易です。直径6cm以下のものは無症状の場合が多く経過観察でよいと思いますが、6cmを超えると、ときに茎捻転を起こして激痛を生じ緊急手術が必要になることがあります。6~7cmをこえたものは時機を見て手術を考慮すべきでしょう。月経周期に伴って卵巣には卵胞が発育しますが、この卵胞が存続して大きくなることがあります(卵胞嚢胞)。また排卵の後には黄体が形成され、その中に液が溜まることがあります(黄体嚢胞)。これら卵胞嚢胞、黄体嚢胞はときに4~5cmぐらいになって卵巣嚢腫と紛らわしい場合があります。この場合は数週間後に再検すると縮小、消失しています。5cm以下の卵巣嚢腫は無症状なら手術を急ぐ必要はないと思います。

子宮がん検診

イラスト 子宮がんには子宮頚がんと子宮体がんがあります。頚がんは子宮の頚部、すなわち子宮の入り口近辺にできるがんであり、体がんは子宮の奥、子宮内膜にできるがんで全く異なる疾患です。一般に子宮がん検診といった場合は子宮頚がん検診をいいます。

子宮頸がん

子宮頚がんは20才以降すべての世代にみられます。ひとパピローマウィルス(HPV)の感染が原因とされています。このウィルスは感染しても多くの場合は自然に排除されますが、排除されずに残存すると子宮頚がんの発症につながると考えられています。子宮頚がんは他の内臓がんに比べて予後がよいとされていますが、これは検診しやすいこと、したがって早期発見が容易なことが関連していると思います。診断が遅れ進行がんで発見された場合の治療は容易ではありません。頚がん検診は腟鏡下に子宮頚部を綿棒もしくは小ブラシで擦過し細胞を検査するもので痛みはなく非侵襲的な検査です。1年に1度の検診をお勧めします。

子宮体がん

子宮体がんは閉経前後から50代、60代に発症することが多く、20代、30代では稀です。体がんの検査には子宮内膜細胞診、組織診と経腟超音波検査があります。子宮内膜細胞診は子宮の内腔にブラシを挿入し細胞を採取する検査ですが、頚がん検診の場合と異なりやや侵襲的です。多少の痛みを伴います。高齢の女性の場合、子宮は萎縮し子宮の頚管は狭くなっています。子宮頚がん検診のように何才以上は一律に施行するといった検査ではないと思います。大垣市の子宮がん検診では、子宮体がんの検査は最近半年以内に不正出血があり、かつ50歳以上か、もしくは何らかのリスクのある方が対象とされています。経腟超音波検査は非侵襲的でありスクリーニング検査として有用と思いますが、大垣市の子宮がん検診には含まれていません。当院では必要と思われる方には経腟超音波検査を施行しています。

性感染症

クラミジア子宮頚管炎

イラスト クラミジア・トラコマティスという細菌による性感染症です。最近若い人のあいだで増えているように思います。主たる症状は黄色のおりものです。進行すれば子宮付属器炎を引き起こし下腹痛をともなうようになります。治療が遅れると不妊症の原因になることもあります。妊婦さんの場合は流産、早産の原因になります。

淋病

淋菌の感染による疾患です。初期の症状はクラミジア子宮頚管炎と同様の黄色のおりものです。最近若年者の間に増えているように思います。病気が進行すればクラミジアと同じく子宮付属器炎、骨盤付属器炎を引き起こします。抗生物質による加療が必要です。

腟トリコモナス症

トリコモナス原虫の感染による疾患です。症状はおりものです。抗原虫薬の内服薬もしくは腟錠による治療が必要です。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスによる感染症です。外陰部、腟に左右対称に水疱、潰瘍ができ、強い疼痛、排尿痛を伴います。初感染の場合は特に症状がひどく歩行に困難を生じることもあります。抗ウィルス剤の塗布薬、内服剤により2週間ぐらいで治癒しますが、このウィルスは体内に潜み期間をおいてまた再発することがあります。再発の場合の症状は一般に軽症です。

尖圭コンジローム

ヒトパピローマウイルスの感染による疾患です。外陰部、腟壁に粟粒~米粒、小豆大の硬いイボが複数個できます。疼痛はありません。粘液状の塗布薬により一か月ぐらいで治癒する場合が多いですが、大きなイボの場合は切除が必要になることもあります。

更年期障害

40歳代半ばごろから月経周期は一般に短くなってきます(20~25日ぐらい)。その後は逆に周期は長く不規則になり最後は閉経を迎えます。閉経年齢は個人差が大きく42歳から55歳くらい、平均50歳くらいです。この閉経期に前後して上半身から顔面のほてり、のぼせ、発汗(hot flash)、不眠、頭痛、イライラなどの自律神経失調の症状が出現することがあります。卵巣ホルモンの低下によって起こりますが、個人差が大きく、軽症、あるいは全くそのような症状無しで閉経を迎える方も多いようです。軽症あるいは症状のない方は治療は必要ないと思いますが、症状がひどく生活に支障をきたすようならば治療が必要です。自律神経失調症治療薬、漢方療法、ホルモン補充療法(HRT)などがあります。

生理日の変更

イラスト 生理の予定が旅行などの日程と重なるときに、生理を先延ばししたい、あるいは早く終わらせておきたいといったことは皆さん経験あることと思います。予定生理開始の3日前よりホルモン剤を服用すれば任意の期間生理を先送りすることができます。前月の生理中、もしくは生理終了後の早い時期に受診されれば次の生理を7~10日早く来潮させることもできます。お気軽に御相談下さい。

妊婦健診

当院は現在分娩を取り扱っていませんが、妊娠初期(16週ぐらいまで)の健診はやらせて頂きます。16週以降は分娩を予定されている病院、クリニックへ紹介状を書かせて頂きます。

予定生理が10日ほど遅れ妊娠かなと思ったら自分で妊娠検査薬を施行される方が多いと思いますが、検査薬を施行せずに受診して頂いてもかまいません。妊娠週数は最終月経の第1日目を0日として1週、2週、……と数えていきます。生理周期が28日の方は予定生理日が4週0日になります。40週0日が出産予定日になります。妊娠5~6週になりますと超音波診で子宮内に胎嚢という小さな袋が見えてきます。7週になると胎児心拍が認められます。胎児の大きさ(頭殿長)は7週で1.0cm、8週で1.5cm、9週で2.0cm、10週で3.0cmになります。10週までの頭殿長は個体差、計測誤差が少ないため妊娠週数、分娩予定日の算出の根拠になります。10週までには受診してください。

妊娠7週以降で胎児心拍が確認され、特に異常がなければ妊娠届出書をお渡しします。お住いの市区町村の保健センターへ妊娠届出書を提出すると母子手帳が交付されます。届出書提出時に個人番号が必要です。母子手帳と同時に妊婦健診受診票が交付されます。これは以後の妊婦健診料、検査料の補助券になります。手続きについては看護師が詳しく説明させていただきます。

イラスト
 妊娠8週の胎児(中央部の白い影):頭殿長1.7cm

避妊

低用量ピル

イラスト 確実な避妊の方法として、いま一般的に用いられているのは低用量ピルです。毎日女性ホルモン剤を服用することにより排卵を抑制し、確実な避妊効果を得る薬です。以前は中用量ピルというものがありましたが、肥満、嘔気等の副作用、また血栓症等のリスクがありました。低用量ピルはこれらの副作用を極限的に減らすよう開発されたものです。40歳未満で特に合併症のない女性なら安心して服用できる薬だと思います。ただし高血圧症、糖尿病、心疾患、血栓症、その他、ピル服用に不適とされる合併症を有する方には処方はできません。服用開始に当たってはこれらにつき問診が必要です。長期間服用の場合は6か月ごとに血液検査、1年ごとに子宮頸がん検査をやらせて頂きます。低用量ピルには生理痛の緩和、月経血量の減少といった副効用もあります。

緊急避妊薬(アフターピル)

性交後72時間以内に服用することにより排卵を抑制もしくは遅延させ妊娠を阻止する薬ですが、低用量ピルとは異なり確実な避妊方法ではありません。妊娠阻止率は約84%と報告されています。勧められる避妊方法ではありませんが無防備の性交渉の後のやむを得ない避妊方法です。すでに排卵している場合には効果は限られます。また妊娠が成立している場合には中絶の効果はありません。服用により排卵が遅延される可能性があり、服用のあと次回の月経開始までは性交渉は避けるのが原則です。

ロゴ 診療内容

  • 婦人科一般
  • 子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫
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  • 妊婦健診
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